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草津のものづくりvol.07 風樹工舎(ふうじゅこうしゃ)
MANUFACTURING
草津のものづくり
難題に応える木工品
風樹工舎(ふうじゅこうしゃ)
今回ご登場いただくのは、木工作家の「風樹工舎」青木義雄さん。
お伺いした作業場兼ご自宅の周りには、たくさんの木材が立てかけてあり、次の作品になる日を心待ちにしているよう。
わくわくした気持ちでお話をお聞かせいただきました。


まず最初に、青木さんが木工を始めたきっかけを教えてください。
物を作ることや絵を描くことは、昔から好きでした。
中学生の時に技術家庭科の授業で作った木の棚やオルゴールはよっぽど気に入ってたのかまだ残っていますしね、大学時代は教育学部でしたけど、美術の授業もとっていて洋画を描いたりしてました。
その大学時代に、和辻哲郎さんの「古寺巡礼」という本を読んでお寺参りをしていたんですが、宮大工の西岡常一さんが書かれた本もよく読んでいて、それで木工や宮大工さんの仕事に興味を持ったのが一つのきっかけですね。
ステレオ、オーディオが好きだったので、スピーカーの箱やったら日曜大工で出来そうで自作しようと思い、ホームセンターで鉋を買ってやってみたけど全然駄目でした。(笑)

木工の技術はどのようにして身に付けられたのですか?
大学卒業して勤めていたんですけど、ある時に高島で宮大工をされている方の展示を見に行った時に突き動かされたというか。やっぱり興味があったんでしょうね。
結局、仕事を辞めて、修行にその方の所に通うようになりました。自身の世界観を持った、強烈な方でだんだん足が遠のいてしまったのですけどね(笑)
その後、木工の雑誌なんかを見ながら独学で続けていたんですけど、材木を仕入れさせてもらっていた京都の材木屋さんの教室にも1年ほど通いました。そのうちに作品作って個展をしたり、注文頂いたりで今に至ります。

今まで作られた商品や作品で印象に残っているものはどんなものでしょう。
以前、墨の抽象画の作家さんと二人展をした時に一緒に作品を作ったんです。枠組みを僕が作って、窓の部分に絵を描いた紙を貼る照明器具の作品でした。ただ、机上コラボだったので、展示会の時に「気に入らへんから、もう少し何とかして」って言われてね。
相手は木工の素人ですから無理難題を言うて来られるんです。でも、「出来ない」って言ったらそれまでですし、考えたら何かと思いつくもので、結果的に良い作品が出来たなと思います。
他にはどんなものがありますか?
そうですね、ちょっと変わったものでは、テーブルなんですけどね、「普通に椅子に座っても使えるけど、座卓としても使いたいので脚を工夫してほしい」という注文がありました。それに対しては、脚を三角形にして、立てたらテーブルになり、寝かせたら座卓になるように天板を乗せて使うというものを作りました。
あとは、「可愛らしい仏壇」や「女性らしいついたて」みたいに抽象的なご注文は、やっぱり悩みますね(笑)
大きなものでは、常勝寺のお厨子の修理を依頼された事もありました。お堂が盗まれたことがあったんですが、その時に壊された部分の修理でした。100年、200年残るものに携わるというのは責任も大きいですが、とてもやりがいがありました。

木工を通じて学んだことはどんなことですか。
一定のテンションで一つ一つ仕事をこなしていくことかな。
宮大工は普段お寺のような大きなものを建てるでしょう。その時に必死なテンションで仕事をしていると続きません。芸術作品を作るのではなく、仕事ですから。
だから、宮大工さんの所に修行に行っていた時も教室に通っていた時も一番最初は刃物研ぎをするんですね。木工がしたいからといって、いきなり木を削る仕事は出来ません。
刃物を自分で砥げないと仕事ができませんし、砥石にぴたっと吸い付くように砥げるようになるまで、そして来る日も来る日も同じテンションで出来るようになるまで、砥石に対して真っ直ぐに体を動かすことで、それがどういうことか体に覚えさせるんです。
木を加工する時に真っ直ぐに刃物が動かせている事、加工された木を見てもそれが平面かが分かる事。そういう基準ができているというのが基本です。
幅の広い鉋の刃から始まって、次はもっと幅の狭いやつと進んでいくのですが、平面に砥ぐには当然砥石も平面でなければいけません。
使っているうちに真ん中がへこんでくるんですけど、そうなると砥石同士をすり合わせて平面にするなど、常にそうやって精度を追及していきます。
これもまさに同じテンションで仕事を進めていくという事。
作品に向き合うのと同じくらい、使う道具や場所への気配りが大切です。
そういう作業を重ねて最終的に形になるというのがとても面白いですね。
市販の木工品に物足りなさを感じたら、是非青木さんにご相談してみてください。
ずっと使っていきたいもの、そして実際に長く使えるものを作ってくださるはず!
街あかりや宿場まつりなどで木工教室を開催されていますので、是非体験してみてください。
風樹工舎(ふうじゅこうしゃ)
草津市集町7-5
TEL/FAX:077-568-3284
