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草津のものづくりvol.08 銀峰工房(ぎんほうこうぼう)
MANUFACTURING
草津のものづくり
機械では作れない繊細な美しさ
銀峰工房(ぎんほうこうぼう)
日本の昔から続く金属工芸の技術を礎に草津で工房を構えられている伊庭拓也さん。
峰風遠州流にて華道の道も究めておられるその心と技についてお話をお伺いしました。


工房名の由来を教えてください。
何をやっている所かイメージしやすいという事を、まず思いました。伝統工芸、特に和の装飾の分野では銀をメインにしているものが多いので、「銀」という文字を付けようというのがあって、それに私自身華道の峰風遠州流の師範が終わって司会頭というところまで来ているんですけど、「峰」という響きが好きだったこと、また銀で峰というところまで行くのを目標にしようという事で「銀峰工房」と付けました。

ひとつの作品を作るのにどのぐらいかかりますか。
そうですね、まず頭の中で、デザインを考えながら作る工程をシミュレーションするんです。伝統の部分で色の配置など決まっていたりするものもありますが、そういう条件も含め、出来上がった時の事も想像して実際にデザインを描いて、修正して、作りながらまた修正して・・・と大体1つの作品で一か月以上はかかります。
簪(かんざし)や帯留めなど身に付けるものは、何より使っていて引っ掛かりや体を傷つけたりとか、着ている服や着物を傷つけてしまってはいけません。そのような点もきちんと押さえた構造でどれだけ理想のデザインに近づけるのかを、今までの経験を活かして、作りながら考えます。
お客さまから「どうしても使ってほしい」と、宝石などもお預かりをすることがあるのですが、やはり世の中に一つの物ですし、失敗することは許されない。そういう時はいつも以上に時間をかけます。
ただ、時間をかけるから良い物が出来るわけでもないですし、いい意味でブレーキをかけ、限界までやった上でお客さまに満足して頂けるものを作り上げようと思っています。

伊庭さんのこだわりや独自の手法としてはどんなものがありますか。
やはり「手で作る」という所でしょうか。
やすりかけも手でほぼ完全に仕上げてから、最後の最後に機械ですっと撫でるように仕上げます。また、簪の脚の部分でも機械で作られた銀の板を切り抜いて作ることも出来るのですが、やはり機械で作った銀の板には見えないのですが歪みがあるんです。その歪みはずっと使っていると変な力が加わった時にぐにゃっと曲がってしまうんです。
私の作品は何度も叩いて、伸ばして練られてと鍛え上げて作っているので、何十年も残ります。見た目は同じように作ることは簡単ですが、作り手の気持ちも物の品質も違います。 ずっと使っていただいて、次のお嫁さんに受け継いで貰えるような作品にしていきたいと思っています。丁寧に使っていただいたら、美術館に残るぐらい長い年月持っていただけます。
あとは、「細かさ」です。 図面を描いて、バラバラに最終的に一つの所に向かって作っていきます。5割程度できたとしても形はまだ見えません。8割程過ぎたところでやっと形に見えて、テンションが上がるのですが、そこから完成までは、まだまだほど遠いんです。完成をした時は「すごく良い物が出来た!」って思うのですが、次の日見ると「もうちょっとコレこうしたらよかったな」って思う事も多くて、完成した後は もう一回見るのが怖かったりします(笑)

そのような細かいものであっても修理は可能ですか。
修理も出来ますよ。ただ、例えば全部銀で出来た作品ですと銀を溶かして引っ付けているので、修正する時の溶接用の銀の含有量が少ないと茶色く変色してしまったりします。私の作品は、すごく細かいのでそういった薄い変色すらかなりの欠点になってしまいます。
普通一つの作品で溶接は10回でも多い方なんですが、私の作品だと多い物で50~60回溶接をして仕上げていたりします。それだけ溶接をすると初めの場所がボロボロになりますし、変色することもあるのですが、そうならないように銀の含有量を増やしたり、熱を他の部分に影響させないよう火を調整しながら作っていくんです。
すごく気を使う作業なんですね。そのようなものづくりのモチベーションをキープするコツなどはありますか。
あと最後に、ものづくりを通じてお客様に伝えたいという事があれば教えてください。
琵琶湖を見に行ったり、美術館に行ったりと、良い物を見て心を落ち着けています。
あとは、お客さまの反応に力をいただく事がとても大きいです。手に取られたお客さまから「すごく良かったです」や「ありがとうございます」とお手紙をいただいたりすると、一人泣きそうになっていたりしています(笑)
伝統工芸品はなかなか見る機会や手に取る機会が少ないのですが、個展などを通じて金属工芸の世界にたくさんの方に興味を持っていただきたいと思ってます。手に取って頂いて「こういうのがあるんや」って思ってもらえるだけで嬉しいですね。
伝統の枠組みにとらわれず、様々な作品を作り出しておられる伊庭さんの簪や帯留め。
まずは是非HPでご覧ください。
そして、個展や工房にて、繊細な手作りの美しさを手に取ってご覧いただくことをおすすめします。
銀峰工房(ぎんほうこうぼう)
TEL:077-584-4705
FAX:077-584-4705
Email:takuyaiba@hotmail.co.jp
ホームページ:http://www.takuyaiba.com/
営業日:要予約(事前にご連絡ください)
定休日:不定休・日曜・祝日
